最近、女優の奈美悦子さんがТVなどで闘病生活を明らかにしたのが、この掌蹠膿胞症です。手のひら(掌)と、足の裏(蹠)に赤い小さな発疹が次々とでき、膿疱になって破れ、破れてめくれた皮膚が角質化してボロボロと剥がれ落ちてくる症状の病気だ。奇妙なことだが、手のひらと足の裏だけにしか症状が出ないので「掌蹠」という名前がついている。決して他人に感染する病気ではありません。
 症状は周期性があり、出ては消える―を繰り返す。そして、やっかいなのは、この病気は原因が不明と言われていることである。治療法も確立されていない。治療法としては、ビタミンHを補充する「ビオチン療法」が患者の間では有名だが、確立された治療法というまでにはなっていないようだ。そのため、診察を受けた皮膚科医などからは「一生治らない病気」と宣告されることになる。
 さらにやっかいなのは、この病気に罹った人の何割かは、胸(肋)骨や胸鎖間接などに炎症を起こし、極めて激しい痛みに七転八倒することだ。「掌蹠膿疱症性骨関節炎」という病気である。私も、「掌蹠膿疱症性骨関節炎」(私の場合は「頚椎」に炎症を起こした)を併発した一人です。

 ところで、掌蹠膿疱症の患者数はどの程度なのだろうか?
 残念ながら患者数を詳細に調査したデータはないようだ。「一万人に一人」とか「500人に一人」「200人に一人」などといわれることもあるが、それさえも大きな開きがある。
 仮に「500人に一人」説を基に大胆な計算をすると、全国で25万人くらいということになる。糖尿病の740万人(予備軍880万人)や高血圧症の3100万人(予備軍2000万人)といわれる患者数と比べたら明らかにマイナーであるが、少なくない数字だと思う。

 それなのに、この病気を知っている人は意外に少ない。
 この病気は、水虫に似た症状が出るので、水虫と勘違いしている隠れ掌蹠膿疱症の人も多いと思われる。症状が出ても、しばらくすると症状が消えるという周期性があるために、深刻に考えていない人もいるのだろう。
 がんのように生命の危険が差し迫っている病気でもない。他人に感染する病気でもない。手足の皮膚が角質化してボロボロと剥がれ落ちる症状を人目に触れないように隠して、一人悩んでいる病気である。

 私も、手のひらの症状を人に見せた時に嫌な顔をされた経験がある。それ以来、できるだけ人目に触れないようにしてきた一人である。
 それが、この病気が世間に知られていなかった理由なのではないのだろうか。私も知らなかった一人である。

 だが、この病気を知ってからは、「もしかしたらこの人もそうなのではないか」と思う場面に何度か出会っている。私の症状を説明した時などに、「私も、時々手のひらに小さい赤い発疹ができて破れる」といって手を見せてくれたりする人がいる。掌蹠膿疱症の極めて初期の、そして極めて軽症の段階の症状とそっくりなのである。「いずれ症状が進行するのだろうか」と、その人の手を見ながら思っていた。

 もしもそうだとするならば、症状が進行して皮膚科などに通っている人が25万人だとしても、その予備軍は何倍もいると考えてもよさそうだ。

 手のひら(掌)と足の裏(蹠)だけに、赤い小さな発疹が出て破れる(皮膚がめくれる)症状を繰り返したら、掌蹠膿疱症を疑って欲しい。症状が進行すると、骨や関節に炎症を併発し、激しい激痛と苦闘することになるのだから。(